千秋先生は極甘彼氏。


  千秋先生の使用後のせいか、残り香がひどかった。悪い意味じゃない。もう、ありがとうございます!!って感じだ。

 一応シャンプーはトラベルセットの中にいつも使うものがある。ボディーソープもそうだ。でも、やっぱり千秋先生とお揃いがいい。

 メイクを落として歯磨きをする。シャワーで汚れを落として髪と身体を洗い湯船に浸かった。

 「ほぅ」

 バスタブが広くていい。足をしっかり伸ばせる。1日歩いて疲れたからふくらはぎがパンパンだ。

 軽く脚のマッサージをしながらこの後のことを考える。恥ずかしいし緊張するけど、それ以上に早くふれたい。

 果穂。
 
 エフェクトがかかった上半身裸の千秋先生が私を見下ろして微笑んだ。艶っぽい声に逞しい裸体。その裸体に抱きしめられて……

 (にゃあぁああああーーーーーー!)

 ぼんっと顔が熱くなって両手で顔を覆った。いや、これからスるけど、なんかもうなんかもう…!

 「ごちそうさまです!」

 千秋先生がいればきっと「なに急に。どうしたの?」と苦笑されそうだ。

 そんな彼の姿を想像していそいそと身体を拭きおろしたての下着とパジャマを身に纏うのだった。


 「お、待たせしました」

 脱衣所にあったドライヤーを借りて髪を乾かせば結構な時間がかかった気がする。それでも千秋先生は、リビングでパソコンを広げて待っていてくれた。

 「待ってないよ。それよりそれ、パジャマ?」
 「はい」
 「……そんな可愛い恰好、俺の前だけにしてよ?」

 買ったばかりのパジャマはクリーム色地で黄色い花柄のセットアップ。袖が少し短くて、おまけにショートパンツ。今の季節は少しまだ肌寒いのでふわふわのカーディガンを羽織っている。

 「…ま、柾哉さんに見せるために買ったから柾哉さんの前でしか着ない、よ?」

 カーディガンの裾をキュッと握り締める。
 おずおずと視線を上げれば溶けそうなほど甘い視線とぶつかった。

 「……じゃあもっとよく見せて」

 誘われるまま、一歩、二歩、彼に近づく。
 全身が見える位置で立ち止まれば音のない時間がしばらく続いた。呼吸音すらも聞こえなくてただ、心臓の音だけがやけにうるさい。

 「…はぁ、」

 コンタクトを外して眼鏡になった彼はいつもの《《千秋先生》》。それなのに耳も赤くて視線が泳いでいる。

 「…俺、全然自信ないよ?大丈夫?」

 千秋先生が立ち上がり私の目の前に立つ。

 「わ、わたしも、その、床上手じゃなくてすみませ…っ」

 頭を下げようとすれば肩を抱き寄せられた。
 不思議に思い顔をあげる。

 「床上手って、なにそれ」

 クスクスと笑われて膝下と腰を持ち上げられる。脚がふわっと浮いて抱き上げられたんだと気づいた。

 「ちょ、」
 「俺が自信ないって言ったのはセーブできる自信がないってこと」

 話をしながら彼の脚は迷わず進む。
 目的地はただひとつ。歩きながら彼にぎゅうと抱きつけば。

 「そういえば、ほっぺちゅー、まだしてもらってなかったな」

 千秋先生がとんでもないことを言い出した。