毎日メッセージアプリの画面を見てニヤニヤしてしまう。送られたメッセージの内容を読み返してしまう。ベッドの上で転がりながらひとり悶えて千秋先生のアイコンをアップにしてうっとりと見つめる。

 この気持ち悪い一連の流れが付き合って三日目にして早くも習慣になりつつある。

 「シンデレラストーリーじゃん」

 火曜PM8:00。
 
 私は千秋先生承諾の元、美雨ちゃんには報告した。ずっと応援してくれていたし何より知っていてほしかった。

 「そ、そうかな?」
 「そうだよ。千秋先生も果穂のこと気になってたなんて。お互い様子見だったんだね」

 美雨ちゃんは見た目にそぐわず豪快にビールジョッキを傾けた。ごくごくと喉を鳴らす。

 「でも千秋先生のいう“かわいい”はわかるわ。私だって男だったら果穂を囲いたいもん」
 「囲うって」
 「そうじゃん。脈ありだってわかった瞬間捕まえにきたんだからもうそれは囲われてるよ。それに毎日電話するんでしょ?」
 「…うん」
 「ひひひ。愛されてるねぇ」

 ニヤニヤとした視線に苦笑した。「愛されてるの」と自信を持って言えないのはトラウマのせいか。

 「大丈夫だって。千秋先生それほど器用そうじゃないし。その茅野さん?って人のことも説明してくれたんでしょ?」

 初めて付き合った彼は高校一年生のとき。同じ部活のひとつ上先輩だった。お互いが初めての彼氏で彼女。何をするのも手探り状態。それが楽しかったけど、エッチは失敗ばかりだった。

 「うん。福原さんには誤解されたくないからって」
 「だったら信じなさい。果穂は可愛いよ」

 緊張しすぎて彼のアレが中折れしたり、勃たなかったり。私が痛すぎて挿れられなかったり、濡れなかったり。そのうちだんだんお互い自信もなくなって、彼が先に卒業した。それなのに進学先の大学で色んな人とヤリまくってた、というオチだ。

 「心配だったら先に伝えおけばいいんじゃない?“恋愛初心者です”って」
 「…うん、そうだね」
 「千秋先生なら喜んで教えてくれそうだし」

 手取り足取り、と言われていつかやってくるその日のことを考えて顔が熱くなる。うまくできるかどうかの不安よりも千秋先生の裸が見れる喜びの方が大きい。

 「ランニングしてるんだって」
 「ほぉー、さすが。じゃあ筋肉バキバキ?まではいかなくともいい身体してるわ、多分。果穂も触り心地いい身体してるし、こりゃ無限ループだ」
 
 美雨ちゃんの手がワキワキとしている。その手の動きに苦笑しているとテーブルに置いたスマホが着信を告げた。

 「はいキターー」
 「わ、ほんとだ」
 「でなよ。ってかでて?聞きたいし」
 「えーー」

 美雨ちゃんのいる前で長話なんてできない。だから当たり障りのない話をして切るつもりだ。