拾った総長様が溺愛してきます、



酔っ払いのおじさんとか、ヤクザの類なら幽霊よろしく完全スルーの特効技を決め込むのだが、自分と同い年ほどの青年となると話は別。


何かに巻き込まれた罪なき一般人なら、ぶっちゃけただの怪我人である。


見捨てる意味はない、むしろここで見て見ぬふりをしたら自分のプライドがなくなるもなにも、ただの外道になる。


「...はぁ」


仕方なく青年のそばに駆け寄って、携帯を光らせて傷の具合を確認する。


母が看護師だったことから、怪我の手当ての方法はよく教わっている。


...なるほど、これは危険そうだが、医者に見せなくとも何とかなるぐらいだ。


ここで救急車を呼んだり病院で連れ込むのはタブーである。繁華街ではそういう暗黙のルールがあるのだ。


よく知らんが、顔がバレるとやばいとか、あっちの世界にも色々あるらしい。