「ほら、あの子。めっちゃ整形してるらしいよ」

「マジ!?」





あぁ、煩い。

廊下を歩くだけで刺さる、好奇に満ちた視線と私の噂話。



新学期も始まって数ヶ月。

1番はじめに比べればかなりマシにはなってきてるけど。



てかそこまで整形してないし。

目の上のシワを1本増やして、
目頭を少し切って、
少し涙袋と唇をぷっくりさせただけ。


まだまだしてないほうでしょ。



整形に対する偏見も悪い印象も薄れてはきているけど、
高校生なんて噂話だとか陰口だとかが大好物だもんね。

他人のこと話して笑ってる暇あるんなら自分の顔面なんとかしなよ。






学級日誌を先生に届けて、周りからの視線から逃れるように早足で教室に戻る。


正直高校なんて面倒くさいことだらけだし、義務教育でもないんだから出来れば行きたくないんだけど。

高校進学率が95%の国に生まれてしまった以上、将来満足のいく生活を送るために進学は必須だったし。





「あ、穂波くん。学級日誌なら持っていったよ」

「ごめん、日直だったの忘れてた」

「そうだろうなって思ってた。私部活とか入ってないから大丈夫だよ」





割と学級日誌書くの好きだったりするし、わざわざ戻って来てくれたとか良い人なんだな。

部活着を身にまとって息を切らしている穂波くんの姿に、少し笑いがこみ上げてきた。





「なに笑ってんの」

「いや、なんか良い人だなーって」

「来栖さんも良い人だよ」





自分の表情が固まったのがわかった。

すぐに「私が良い人なわけないでしょ」と笑ってみせる。





「来栖さんの悪い噂とかもたまに聞いたりしてたからさ、噂より何倍も良い人でびっくりした」

「あー、なるほどね。みんな噂話好きだよね。でも事実なこともあるから」

「整形とか?」





せっかくつくった表情がまた崩れる。