この『恋』の言い換えをするならば『瑕疵』(かし)です


結局パンケーキは
9割私が食べた



お兄ちゃん手伝うとか言って
私の口に入れるのを手伝っただけだし!



「おいしかったね
また食べに来よう」



運転しながらお兄ちゃんが言った



「お兄ちゃん、ほとんど食べてないじゃん!」



助手席からお兄ちゃんの横顔を見る



「瑛茉、ここのアパートにするの?」



またアパートを通りかかって
お兄ちゃんが言った



さっきのすごいマンション見せられたら
新築アパートが
すごくちっぽけに感じた



お兄ちゃんとの力の差も感じた

やっぱりお兄ちゃんには敵わない



「私、実家から通おうかな…
そしたら自炊しなくていいし…
お兄ちゃん実家出るなら
お母さんとお父さんも
私がいた方が寂しくないよね?」



「…」



お兄ちゃん?



お兄ちゃん怒らないんだ?

いつまでも親に甘えるな!って



「私も休みの日ぐらいはご飯しようかな…」



自分で言ってみた



「…」



お兄ちゃん…?



お兄ちゃんは何か考えてる



ずっと無言だ

この無言ちょっと怖い



帰ったら怒られるのかな?



「あ、今日ありがとう
ドライブ誘ってくれて…
お兄ちゃんと話せてよかった」



「うん…
オレもよかった
ドライブとか初めてした」



話題を変えたら
お兄ちゃんはちゃんと返事した



「え、そーなの?
彼女としたことなかった?
ドライブって
デートの定番みたいなカンジじゃん」



「瑛茉はあるの?
そーゆーデート」



「ん?ないよ
私、デートっていい思い出ないかも…
今日の方が楽しかった!」



あ…変なこと言ったかも…



「オレも楽しかった」



そう言ったお兄ちゃんは
もうすぐ誰かとあのマンションに住む



お兄ちゃんが
私のお兄ちゃんじゃなかったらな…

この期に及んで
まだそんなことを願ってしまう



でもお兄ちゃんは
私が妹じゃなくても私なんか選ばないよ



自分に言い聞かせる



「いい思い出になった
ありがと、お兄ちゃん」



お兄ちゃんは
私のお兄ちゃんだ



私の気持ちはこの先一生誰にも言わない

一生思い出



「瑛茉…今、好きな人いる?」



「え!?なんでそんなこと聞くの?」



「久しぶりに会って
また可愛くなったな…って思ったから…」



老けたねって言われなくてよかった



「ちゃんとパックしてるからかな?」



照れ隠しにそう言った



「好きな人のためにパックしてんの?」



「え…そんなことないけど…」



昨日お風呂で
トリートメント長めに置いたのも…
鏡で顔をチェックしたのも…



「好きな人、いるよ…」



私はきっとまだ…



「いるんだ…」



「うん…」



好きな人いるよ



その人に少しでもいいから
かわいいって思われたかった



その人に
私の他に好きな人がいても

その人は
私を恋愛対象にしなくても



「それって…
ずっと前から好きだった人?」



え…



お兄ちゃんを見たら
お兄ちゃんは真っ直ぐ前を見て運転してた



そんなこと
聞かないでよ



「うん…」



私も真っ直ぐ前を見て答えた



私はきっとまだ…

ずっと…

一生お兄ちゃんが好きだ