この『恋』の言い換えをするならば『瑕疵』(かし)です


「…お兄ちゃん…」



「…なに…?」



お兄ちゃんの部屋に行く勇気がなくて
スマホから通話した



「なに?話って…」



「…別に…
久しぶりだし、ちょっと話したかった」



壁一枚隣にいるお兄ちゃん

すぐ耳の近くでお兄ちゃんの声がする



ベッドの上
緊張して膝を抱える



「ふーん…」



「そっち、行ったらダメなの?」



「うん、ダメ」



「なに?反抗期?」



お兄ちゃんの言葉に少し笑いが含まれてた

また妹扱いしてる



こっちは…

私は…

ドキドキしてるのに



「別に…」



「瑛茉もビデオ通話にしてよ」



「え?」



画面を見たらお兄ちゃんが映ってた



「ヤダよ
なんの為に…」



「顔、見たいじゃん」



「私の顔はいい!
ブスだから…」



ベッドに寝転んでるお兄ちゃんが
画面いっぱいにいる



「ブスかどーか見せて」



そう言ってお兄ちゃんは笑顔を見せた



顔が火照る

絶対見せれない



「いい!ブスだから
あ、明日早いんだよね
もぉ寝なきゃ…」



「どこ行くの?」



どこ行こう



「えっと…
今日、友達とアパート見てきたんだけど
そこに決めようかな…って…
早く契約しないと
春だからすぐ決まっちゃうかも…」



「職場、ここからも通えるんだろ
じゃあ無理にアパート借りなくても…」



ここから出て
独り暮らしする理由は
ここにお兄ちゃんがいるからだ



「ひとりの方が気楽だし…
もし、お兄ちゃんの彼女とか来たら
私みたいな妹いたら嫌だと思うし…」



私もお兄ちゃんの彼女
見たくない


今まで何人もいたけど
やっぱり嫌だった


胸がザワザワしたのは
ヤキモチだったって今ならわかる



「じゃあ、オレが出るよ」



「え…?」



「瑛茉、オレのこと避けてる?」



「…」



そんなの、答えられない



「ごめん…
最初に避けたの、オレだわ…」



お兄ちゃんの声が
苦しそうだった

画面のお兄ちゃんは笑ってなかった



私、お兄ちゃんに避けられてたんだ



そう思ったら
呼吸より先に涙が出てきた



お兄ちゃん
私のこと、嫌いだった?

やっぱり無理に話し掛けてくれてたんだ



画面のお兄ちゃんの顔が歪んだ



息をしたら
ヒュー…って胸が痛かった



「瑛茉…?…泣いてる?
やっぱりそっち行ってもいい?」



「…ダメ…絶対、ダメ…」



「ごめん…
もぉ、瑛茉の嫌なことしないから…

どぉしたら瑛茉が幸せになれるかな…って
オレずっと考えてたんだ

それでこっち帰って来た
泣かせるためじゃないから…

だから、泣かないで…」



どぉしたら私が幸せになれるか



自分でもわからない

なれる気がしない

あきらめてた



お兄ちゃんはそれを
ずっと考えてくれてたの?



なんで?



「瑛茉…
今、電話してきてくれて、ありがと
嬉しかった

明日さ
嫌じゃなかったら
ちゃんと会って話したい

アパート決める前に会えない?」



お兄ちゃんとは家族だ

このままずっと会わないで過ごすことは
できないし…

したくない



私も本当はお兄ちゃんに会いたかった



避けられてたとか辛すぎる



お兄ちゃんも辛かったかな?

さっき私に避けられて



「お兄ちゃん…
もぉ、私のこと避けない?」



「うん」



「遠くに行かない?」



「うん」



お兄ちゃんの声が
優しく耳に響く



「じゃあいいよ」



やっぱりお兄ちゃんは
私のお兄ちゃんだ