多居是(たいぜ)くんが行くって聞いたから、お祭りに行く事を決めた。

多居是くんに見て欲しいから、浴衣を着る事を決めた。

だけど今は……多居是くんに会いたくないから…集合場所に行かない事を決めた。

多居是くんだけには…見られたくないこの姿……。

泥水で汚れた浴衣を着て歩く私を……。

浮かれすぎたな…。

多居是くんの事ばかり考えて、前だけを見て歩いてたら、前日の大雨で出現した水たまりに気付かず、思いきり入ってしまった。



裕持(ゆじ)

「多居是くん…」



最悪……。



「多居是くん…私……お祭りに行けない。
皆にもそう伝えて」

「…ごめんだけど、無理。
俺も行かないから」

「……どうして」

「泣いてる裕持を抱きしめたいから」

「……ダメだよ…。
私を抱きしめたら…服が…汚れるし……、人にも…見られて」

「そんなの裕持を抱きしめない理由にならない」

『抱きしめないで』



多居是くんの体温が一瞬で、私の出そうとした言葉を止めた。



「裕持。
浴衣姿、よく似合ってる」