「あの、このお弁当渡しておいてもらえないでしょうか」
「えー、ちゃんと手渡してあげて。ところで見ないの?」
なんとか絞り出して本田さんに言ったけれど笑顔で断られ、どうやってここを立ち去れば良いのかしか考えられない。
彼女は何故こんな熊さんを私に見せようとするのだろう。実は熊さんが嫌いなのだろうか。
「遅い」
低く、重い、でもゆっくりとした声がまるで地震の波動のようにこちらに伝わってきて私は驚いた。
だってこの声は、熊さんだ。
「既に聞き込みを終えているはずだな?」
「申し訳ありません。その、思ったより住人の口が堅く」
「時間が経てばちょっとした記憶なら変わってしまう。一回や二回断られたくらいで終わらせるな。すぐに動け」
「はい」
私は食い入るように隙間から中を覗く。



