「あの」
私は歩き出しそうになった本田さんに小声で声をかけると、本田さんが顔を寄せる。
「あの、森野さん、窓際の席でずっと仕事してるって聞いたんですが、私が行って余計迷惑にならないでしょうか」
今更だがちょっと働いているところを見たかっただけで、あの熊さんが叱責されている所なんて見たくない。
考えてみれば私なんかが突然来て、仕事場に子供を連れてきたと評価を下げたりしないだろうか。
だが本田さんは私をまじまじと見た後吹き出した。
「ごめんなさい。窓際だなんて言ってたの?」
「はい。ずっと座ってばかりで腰が痛くなると」
「まぁ嘘は言ってないか」
今にも大声で笑い出しそうなのを堪えるように言っているけれど、どういう事だろう。
「まぁ見てみるのが早いから」
そういうと廊下を進んだ先のあるドアの前に来て静かにそして少しだけ本田さんが開ける。



