乙女と森野熊さん


私は仕方なく、わかりました、と言うとそこから離れて再度電話をかけてみたがやはり繋がらない。

元々無謀だったのだ。もしかしたら熊さんのお仕事姿が見られるかも、なんて思って期待して来た分ショックも大きい。

私は紙袋に入ったお弁当を見て肩を落とすと、警視庁を後にしようとした。


「乙女ちゃん?」


背後から女性の声がして振り向くと、ゲートの先で、黒のパンツスーツにショートカットの女性がこちらを驚いた顔で見ていた。


「あ!やっぱり乙女ちゃんじゃない!どうしたの?」


彼女はゲート横の警察官に声をかけそのゲートが開くと、笑顔で私の側に来た。

だが私はこの女性を知らない。もしかして熊さんの知り合いだろうか。


「もしかして私のこと覚えてない?」


苦笑いで話しかける美人のお姉さんは私と目線がほぼ同じ。足下を見ればあまりヒールは高くない。おそらく私と同じくらいの身長の女性だ!