今度は道路の方から男性達の大きな声が聞こえる。

どこに行った!、警察は呼んだか、と騒ぐ声に私は逃げた男の方向を見る。


「怪我無い?」


「うん」


「じゃぁ警察に電話して。私はあの男捕まえる」


「えっ?!」


私は慌てるりんごちゃんをそこに置いて、柔道着の入った鞄を担ぎ直すと走り出した。

まだそこまで離れていないはずだ。

体格的にそんなにでかくもなかったし、身長も高くなかった。

足が速いようにも見えなかったけれど、わざわざりんごちゃんを突き飛ばし男が振り返ったとき、何だかこちらを笑っているように見えた。

犯罪者だ、捕まえないと。

私はそう思い必死に走るとさっき見た背中と似た男が少し先を普通に道を歩いているのを見つけた。


「ちょっと!」


私の声に男は振り返り、一瞬立ち止まっていたようだが走り出した。

私もすぐさま追いかける。夏の昼間ということもあり住宅街に人気が全くない。