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五月下旬、私は制服を着て同居人の車に乗り、都心から少し離れたとある寺に来ていた。
一周忌の法要を二人だけで終え、桶や花束などを同居人が持ち沢山のお墓が並ぶ中を進み薄い灰色の墓石の前で止まった。
目の前にあるその墓はまだ新しい。
何せ出来てまだ一年経ってない。
墓の隣にある平たい墓石には名前が三人分彫ってある。
私の両親、そして私のお父さんの妹、花お姉ちゃんの名前。
身体の大きな同居人には小さく見えるタワシでお墓を洗い、私が新しい花を生け、みんなが好きだったものをその前に置く。
同居人が線香に火をつけて墓にある受け皿に置くと周囲には線香の煙がふわっと舞い上がり、私はお墓の前にしゃがんで手を合わせた。
だけど隣にいる恐ろしいほど大きい人、森野熊介さんは手も合わせずじっと見下ろしていただけで、
「手桶を返してくるよ」
「え、もう良いの?」
「あぁ」
低い声でそういうと、薄茶色の手桶を持って私から背を向けて歩き出した。
姿が見えなくなって、私は呟く。
「熊さん、お姉ちゃんと二人で話したかったのかな。
私、邪魔だったかもしれない」
熊さんこと『森野熊介』さんは花お姉ちゃんの夫だ。



