「とりあえず、大人が絡むとき、あと乙女ちゃんが頑張ろうと思わないといけないときは俺に話してくれ。

時間がなかなか取れないのは申し訳ないが、メールをしてくれれば必ず見て連絡するから」


「・・・・・・うん。ありがとう」


私が頑張らないといけないとき。

それは両親が亡くなった私への偏見や、色々とお金がかかることだ。

私は両親が亡くなって、学校に通うのに学費以外に沢山お金がかかることを知った。

修学旅行、社会見学、教材に訳のわからない会費。

それを全て熊さんが支払ってくれている。

両親におりた交通事故の保険金は、全額私の名前の通帳に入って一切手つかず。

熊さんから、ご両親が乙女ちゃんの為に残したお金だから、自分のために使えば良いと渡されたのだが、私は私に関わる費用をここから出して欲しいと言ったけれど断られた。

熊さんからすれば、それだけ罪悪感があるのかと思って私が複雑な気持ちでいることをきっときがついているはずなのに。

だから私は、早く自立しなきゃいけない。


「乙女ちゃん」


鉄板ではまたお肉が良い色に焼けて、ほくほくとした大好きなカボチャとともに私のお皿に置かれた。


「俺は美味しいご飯にお弁当まで作ってもらえて、一緒にこうやって焼き肉を食べられることが幸せだよ」


熊さんはそれだけ無表情で言うと、ご飯の上に焼き肉を置いて大きな口を開けて食べる。

無表情に見えるけれど、その声はちゃんと温かくて嘘では無いと思わせた。

こうやってその身体と同じように大きな優しさを持つ熊さんを、きっとお姉ちゃんだけじゃなく好きになる女性はきっといたはずだし、今もいるのかもしれない。

私はせめてこの後も疑似家族としていることが出来たら、熊さんがいずれお姉ちゃん以外の人と結婚してもその繋がりを保てることは出来るだろうか。


「うん、美味しそうにお肉頬張る熊さんと食べてると何でも美味しいから幸せ」


私は綺麗に焼けた国産カルビ肉を二枚、熊さんのお皿に置いてあげた。