でもここは女子校では無く男子もいる共学。

男子の平均身長より身長の高い私は何故か女子から人気と言うこともあり、男子の一部から妬まれているのだ。

中学生の時クラスの女子を苛めてた男子に注意したことがあるのだが、大女の癖にと男子達が笑うのを聞いて、そういう中身が小さい男だから身長も伸びないんじゃないの?とつい正直に言ってしまい、男子達からは泣きそうな顔で覚えてろよ!という捨て台詞を吐かれ、私は不良か何かかと遠ざかる男子を前に、また女の子のファンだけ作ってしまった。

私だって真奈美のように身長が160以下が良かったなぁ。


「で、熊さんは?」


過去の面倒な思い出を振り返りながら悲しみに暮れている私の心中に気づくことも無く、真奈美は屈託の無い笑みで聞いてきた。


「まだ寝てるよ、昨日も帰りが遅かったから」


「大変だねぇ。でも乙女の手作り弁当食べられるのはジェラシー」


「はいはい」


教室に入り、クラスメイト、特に女子ばかりと挨拶しながら机の上に鞄とお弁当の入った袋を置けば、前の席の真奈美が心底羨ましそうに私のお弁当を見てくる。

手作りと言っても、特売で買いためた冷凍食品が占める割合は大きいのだが。

ちなみに私は身長のせいでクラスでの後ろの席なのだが、どう考えても差別なのでは?

私はちょっとだけため息をつきながら席に座った。

まだ朝だというのに既に何回かため息をついたので、私が持っている残り少ない幸せが逃げてはいないだろうか。

そんな私は事情があって熊さんという男性と同居している。

もう五月。

そろそろあの日がやってくる。

私は机に頬杖をつき、葉桜が見える窓の外に視線をうつした。