「山浦さんは森野さんのことで大方怒っているんだろう」
小林先輩の言葉で驚いて顔を上げると、秋山先輩がお茶をすすりながら、だよねぇと言っている。
高木君はノート型パソコンを机の上に置き、回収した小型カメラとスマホの画像チェックをしているようだ。
「森野さんのことは山浦さんが一番わかってる訳で、それだけで十分だと思うよ」
「そうそう!山浦さんに信じてもらうのが森野さんだってきっと嬉しく思うはずです!」
秋山先輩のフォローに青山さんが賛同するようにフォローしてくれる。
独身男と女子高生が二人きりで住んでいる、その文字だけ見てよからぬ想像をする輩は多い。
熊さんは天国とは言えお姉ちゃんという可愛い奥さんがいて、警察官で、私を引き取って面倒を見てくれるような人だ。
そんな人を色眼鏡でみたり侮辱されたりするときが、今は一番腹立たしいのだと気づかされる。
「そんなに噂の森野さんって人、イケメンな訳?」
「いや、熊みたいにでかくてもさっとした人」
「褒めてないじゃんそれ」
高木君の質問に誠意を持って答えたが、高木君は呆れた顔でそう答えて皆が笑う。
これで女子へのセクハラも止まると良いな。
私は心の底で未だ燻っているものを感じながらそう思った。



