ドアが閉まり、熊さんの私の肩をすっぽりと覆う大きな手が離れ、私は無言で歩き出した熊さんについていけばさっきの応接室のドアを開け、


「そこで座って待ってて。誰かに家まで送らせるから」


「え、熊さんは?」


それだけ言って出ようとした熊さんが私の言葉にドアを閉めた。


「俺は元々ここで指揮権がある訳じゃない。部外者だが逮捕した当事者という事で関わってるだけなんだ。

本来の仕事も部下に任せた状況でこの後本庁に戻る必要があるから一緒には帰ることが出来ない。すまない」


仕方が無いことなのに、急に熊さんが見えなくなる、離れることが怖く思える。

でも本来の仕事に影響させてまで助けに来てくれた。そのお礼をしていなかったことに気が付く。


「熊さん、助けに来てくれてありがとうございました」


私が立ち上がって深くお辞儀をすると、大きな靴の先が見えて顔を上げた。