俯いたままの真奈美がぽつぽつと話していて止まる。
その声を、言葉を聞いて、私は指すら動かせない。
死のうとしていた?真奈美が?
そんな事を知らされて、ただ呆然とする。
「実はね、乙女のことが憎らしかったんだ、私」
悲しげな目とナイフのような言葉が、突然私に向けられた。
憎らしい?真奈美が私を?いつから?ずっと?
私の中で沢山の物が溢れかえりすぎて、心がじわじわ握りしめられていくようだ。
「乙女のお父さんお母さんは優しくて仲が良くて。それに比べてうちなんていつも喧嘩ばかり。
そんな乙女の両親が亡くなって、私はこれで私のような痛みを知るんだろうな、きっと今までの乙女じゃなくなるんだろうなって思った、悪くなると期待したのかな。
でも乙女は少し落ち込んだだけで、いつもの美人で強くて優しいままだった。
あんな事があったのに、何の輝きも消えていないことに驚いた。
そうしたら、親戚になった男性と一緒に暮らしてるなんて言うんだもん、無理してこれで変わるんだと思ってた。でも変わらない。
そんな乙女を見て羨ましかった。
私も両親が死んで誰か優しい人に拾ってもらえたら、人生リセットできるのかなって」
真奈美は私を見ずにそれだけ言うと、ペットボトルをあけて一気に飲み出す。
私は口が震えてしまい、ただそれを眺めているだけ。
そんな私に気が付いて、真奈美が寂しげに笑う。



