熊さんはドア近くの壁によりかかり、腕を組む。
「あの」
「俺のことは気にしないでまずは二人で話しなさい」
真奈美が戸惑って声をかけると、熊さんは表情無く返すので慣れてない真奈美がびくりとしてしまい、私は苦笑いしながら真奈美の前の席に座れば真奈美も椅子に座った。
「その」
私がなんと言えば良いかわからずそう言うと、真奈美は疲れたような顔で笑みを浮かべる。
「実はね、一緒に死のうってパパに言われていたんだ、この連休に」
さぁっと自分の血が引く音がした。手先が一気に冷たくなり私は目を見開く。
「死にたいって口にはしてたけど、この頃頻繁に言うようになってて。
それでお母さんから離婚しますと手紙が来てお父さん一気に崩れたんだと思う。
お前まで俺を見放すのかって怒鳴られたり泣かれたりして、段々私も死ぬなら一緒の方が良いのかなって投げやり気味に思ってた。
そんなときに乙女が泊まらないかって言ってくれて、凄く嬉しかったんだ。
もう良いかなって思ってた気持ちが、まだ遊びたい、学校に行きたい、死にたくないって欲が出てきた。
でもとても友達の家に泊まるなんて今のお父さんには言えなかった。すぐ、やはり俺を捨てるのかってなるから。
だから、学校の思い出を作りたいから旅行に行かせて欲しいと嘘を言ったの。ずっと引きこもっていたから、外まで出てまさか監視されてたなんて思わなくて」



