乙女と森野熊さん



暴走、という言葉にどうしても引っかかるが、もしそんなことをするほど真奈美のお父さんがおかしければ、確かに私は事を大きくしていたかもしれない。

それに初めてそこまで熊さんに心配をかけさせて、裏で動いていることを知った。

またこうやって守られていたんだ。

もし熊さんが間に合わなかったら、私はどうなっていたのだろう。

あの時死を覚悟した。

両親やお姉ちゃんもあんな感覚を覚えたのだろうか。

私は奇跡的に熊さんに救って貰った。だから生きている。

恐怖や後悔や自分でも言い表せない感情が胸を締め付けて、熊さんに言葉を返せない。

しばらくしてトントンとドアがノックされ、女性が顔を出した。


「森野さん、こちらは大丈夫です」


「あぁ、今から行く」


熊さんがそう答えると私を見て、


「彼女に会いに行こうか」


その言葉に私は頷いた。