「今回の件を聞いて、俺は一番危険なのは乙女ちゃんだと思っていたんだ。
以前秋山君から挨拶と称して俺に接触があってね、今回乙女ちゃんに変わったことが起きていないか報告を頼んでいた。
乙女ちゃんが誰かの視線を感じたという報告を彼から聞いて、今日昼前になんとか東京に戻って来られたんだが、乙女ちゃんの居場所を見つけるまで時間がかかってしまった。すまない」
そういって熊さんが頭を下げた。
「えっと、なんで私が一番危険なの?今回だって真奈美が一番危なかったんじゃ」
「こういう事案でよく起きるのは、被害に遭っている人間よりも、その被害者の身近にいる人間に対し加害者が逆恨みすることなんだ。
よくあるのは、DVを受けていた女性をかくまった、友人や女性の家族に加害者が危害を加えることだ。
現にそうやって逃げ込んだ実家で家族が殺されたり、匿っていた友人が殺害された事案は多い。
言いなりになっていた相手が自分から逃げる、ようは反抗的になると感じれば、その根源を作った相手が一番悪いと牙をむくんだよ。
だから今回、娘である佐藤さんより、彼女を守ろうとした乙女ちゃんに危険が及ぶ可能性が高いと考えざるを得なかった。
ただもちろんこれは推測で、泊まらせることを止めるように言えば乙女ちゃんが納得しないだろうし、危険性を伝えれば怖がらせたり、下手すると乙女ちゃんなら暴走して彼女を守ろうとする可能性もあった。だから彼に頼んだんだよ」



