乙女と森野熊さん


お姉ちゃんと住むはずだった新居に、親戚になってしまった子供をやむを得ず住まわせているのはどんな気持ちなのだろう。

お荷物でしか無い私に出来ることは、家事をすること、元気で明るくいること。

でもそんなことを熊さんは見抜いてしまうのだ。


『休みの日は外食か何か頼めば良いし、そもそも毎日作る必要は無い。いざとなれば掃除は業者に頼む』


『いや、熊さんの食欲考えたら食材買って作る方が安上がりだよね?

それに仕事柄清掃業者といえども頻繁に家に入れるのはどうかと思うよ、高いし』


『金は俺の稼ぎでどうとでもなる。

乙女ちゃんの本業は勉強であって、学生という貴重な時間を家事で潰すことは反対だ』


『じゃあ、せめて熊さんのお弁当作るよ』


『朝くらいゆっくり寝ていれば良い。俺は適当に』


『うちの学校は食堂無いしお弁当持参が多いんだ。

熊さんの分をついでに作るなら問題ないでしょ?

冷凍食品も安いときにまとめ買いして使うから時間もかからず簡単なお弁当だよ。

買いだめしたいからその時は付き合ってね?』


『・・・・・・わかった』


おそらく熊さんはその熊のようなでかい身体に似合わず押しに弱い。

お姉ちゃんはもっとぐいぐいいったのだろう、見習わなくては。