でも何度か会ううち、無愛想だし無表情だし無精ひげだけどお姉ちゃんを大切にしているのはしっかりわかった。
そして不思議なことにこの熊のような人は私を女の子扱いしたのだ。
ほとんど男子を見上げることのない私はこんな大きな男性に会ったことが無く思い切り顔をあげて人の顔を見ること自体初めて。
そして大女とか、怪力とか男子に馬鹿にされていた私を、色々と女の子として扱ってくれたのはぐっとくるものがあった。
気が付けば、お姉ちゃんが熊さんを好きになるのは仕方が無い、という結論に至っていた。
その後お姉ちゃんはお父さんが大反対するのをわかって、まずは熊さんを同席させずに結婚の報告したが、やはり大反対。
そこに担がれたのが私である。
既に熊さんに良い印象を持っていた私は、目一杯お姉ちゃんの擁護をした。
お父さんは私の説得に渋々熊さんと会うことを承諾、この一連のやりとりを黙ってみていたお母さんは、
『乙女ちゃん、花ちゃんは可愛い顔しているけど策士なの。
乙女ちゃんも少しくらい見習った方が良いわ、乙女ちゃんは人が良いから』
とため息交じりに言われて、どこからお姉ちゃんの計算だったのかとむしろ感心したほどだ。
父親代わりのお父さんのところに熊さんはきっちりしたスーツ姿で挨拶に来て、お姉ちゃんは終始ニコニコ、お父さんは警察官だなんて危険じゃ無いかと陰で文句を言っていたりしたが、結局はお父さんも折れて無事結婚式の日取りも決まった。
五月末で28歳の誕生日を迎える前に結婚したいというお姉ちゃんの希望もあり、入籍だけ先に済ませて結婚式としたのだが、結局お姉ちゃんと熊さんが結婚式を挙げることは出来なかった。
でも私は知ってる。
前撮りで撮ったお姉ちゃんの白無垢姿の写真を、熊さんがとても大切にしていることを。



