朝、歯ブラシを咥えながら洗濯機に洗濯物を放り込み、洗剤と柔軟剤を投入してスタートボタンを押す。

洗面所からリビングを見れば、つけっぱなしのテレビCMに可愛らしい女子高生が洗剤を手に持ち、この洗剤のおかげでお父さんの洗濯物と一緒に洗っても気にならなくなったと笑顔で話している。

これ、女子高生が思いきりお父さん馬鹿にしてない?良いの?

これが逆だったら、例えば我が家ならこんな子供っぽい匂いのする洗剤や柔軟剤が使われているのは迷惑だ、なんて思われていたのならショックだ。

でも良い香りのものは高い。

それはこの家の生活費を預かる財務大臣の私としては優先順位が下がる。

生活費を使うならまずは食費に割り当てたい。だからうちでは仕方がないのだと言い聞かせた。

私は口をゆすぐとキッチンに行き、やっと冷えてきたお弁当の蓋を二つ分閉める。

一つは自分用、もう一つは今寝室で地響きのようないびきをかいている人の分で、軽く私のお弁当の倍以上の大きさがあるがこれで足りているのだろうか。

昨日も深夜に帰宅して、今日も昼前には仕事に行くとメールだけ入っていてきちんと顔を会わせてないし話せていないのは正直言えば寂しい。

だけどあんなにでかい身体でも、ここのとこのハードさでは体調を崩すのではと心配になる。

私は静かにマンションのドアを閉めて鍵をかけると、高校へ向かうため駅へと急いだ。