その日から、テレビ台の横に、奇妙なペンギンの人形が置かれることになった。
頼人は、暇な時間を見つけては、ペンギンに話しかけるようになった。
「ライトくんかっこいい!」
「ライトくんかっこいい!」
といった具合に、自分へポジティブな言葉ばかりかける。
「あのな、言霊って知ってるか? 口に出せば、それが形となって現れるんだ。現に俺、かっこいいじゃん?」
「うーん、そうかな?」
「子供にはわからないさ」
「じゃあ、なんでライトはモテないの? ライトの歳なら結婚して子供がいても不思議じゃないのに」
ライトは今年29歳だった。
「俺は結婚できないんじゃなくて、しないんだよ」
「理由でもあるの?」
「まあ、いろいろと」
「男が好きとか?」
「ちかげと同じようなことを言うな」
ちかげは、頼人の母親の名前だ。



