青天、哉。





このボロアパートに福沢諭吉を5、6人も生贄に捧げなきゃいけないなんて、信じられなかった。


でも、相場を考えると、絶妙なラインだった。


原宿駅や明治神宮前駅には近いし、竹下通りに、表参道、明治神宮、代々木公園といった有名スポットが目と鼻の先にある。


ユニットバスとはいえ、風呂トイレはあるし、和室とはいえ、部屋も8畳くらいはあって、古いとはいえ、キッチンもある。


「これなら私でも住めそうかも」


「だったら早いとこ自立してくれ」


「いや、今のままじゃ無理かな。家賃払うので手一杯」


「いいバイト紹介しようか?」と頼人が言った。


「知り合いの現場監督に頼めば、日当で割ともらえる仕事あるけど」


「そういう仕事はいいや」と私は断った。


「身体もたないし、何より暑いのとか寒いのって嫌いだし。楽して稼ぎたいじゃん?」


「なら、学校行けよ」


「エジソンも学校卒業してないし、学校がすべてじゃないでしょ? そういうライトは学校出てるの?」


「一応大卒」と頼人は信じられないことを言った。


「キャンパスが家から一番近かったから行っただけだけど」


もっと信じられないことを言った。