3度目には、もうすっかりバイトを休む癖がついていた。
「バイトはいいよな。責任感なんてないし、休みたい時は、いつでも休めるんだもんな」
なんて、店長から嫌味を言われるようになった。
そのとおりだ。だってバイトだもん。
笑顔振りまいて、注文を聞き、料理を運び、客の食べ終わった皿を下げてテーブルを拭く。
そんなことに人生を任せるような大人には、私はまだなれない。
「ギャップを感じるのは、当たり前さ。根本が違う」と頼人はブランコを漕ぎながら言った。
「しかし、大人はいつか1番大事なものを見つける。必ずね。その時、太いままではいれなくなる。削ぎ落として、磨き上げて、人生を終えるんだ。それがたとえ、2番目に大事なものであってもね」
「頼人は何かを削ぎ落として大人になったの?」
と私は聞く。頼人は、漕いでいたブランコを止めて、右手の缶ビールを口につけ、
「いや、俺にはまだ1番大事なものが見つかってないから」
と笑って飲んだ。



