君の言葉で朝焼けを迎える

砂を踏む音が足の下でじゃりじゃりと鳴る。


子亀にたどり着いて甲羅の裏に手を置き、元の体勢へとひっくり返し、歩けるかを観察する。


小さい足を少しずつ動かし、前進しようと子亀は動き出した。


「歩けそうだな。浜辺に運んどく。」


そう言って、先輩は子亀を手の中に収め海の方へと歩いていった。


先輩の手から離れて泳いでいった子亀はそのまま海面の下へ潜っていった。


「佐野さん。明日も文芸部あるけど来てくれない?
部長も喜ぶと思うんだ。 みんな怖くないけど、大丈夫そう?」


っ!!


私は首を縦にぶんぶん振った。全員優しそうだった。 部長さんも、先輩も、全員。そのとき何かが頭の中を横切ってきた。


『チョロ笑笑 友達でもなんでもねーんだよ。』


なに、これ・・・


女子の笑い声、私を非難する声、バカにしている声、惨めだと思われている声が。


『むしろ友達だと想ってたわけ?』 『かっわいそー笑』 『また、ボッチじゃん笑』『泣きかけてる顔?気持ち悪!』


や・・・だ・・・・・・。誰なの、なんなの、誰?


私の記憶の、一部、か。 


人と触れ合えるのはまだ一歩早かったのかも。


「無理して来る必要はないんだけどねって、え、あ、佐野さん!?どうした。顔色悪い、水飲む?」


また迷惑をかけてしまった。 私大丈夫。 そう、大丈夫。 大丈夫、大丈夫。


「久しぶりの人との会話で、その、エネルギー消費してしまっただけで。すみません。」