君の言葉で朝焼けを迎える

「ねえ、佐野さん去年全く見かけなかったんだけど、体調でも悪くしちゃったの?」


心配をしているような声で加瀬くんが聞いてくる。その質問で胸が締め付けられるような感覚が全身を包む。


口を開こうと口を動かそうとしても言葉が出ない。 返事をしないと変な目で見られてしまう。


「じゃねーの?てか、今学校にいるんだったら俺は良いと思うけど。な?」


助け舟を出したのは天沢先輩。危ない。助かった。さっきの自己紹介のときも助けられたような気がする。


便乗させてもらおう。


「あ、そなの!体調が崩れやすくて。今は元気なの! ラッキーって感じ。」


「そっかあ、 あ、あのさ!」


加瀬くんからの質問の嵐はしばらく止みそうにない。でも、まともに会話できたからラッキーなのかも知れない。




「んでさ〜ってかやば!もう6時過ぎてるんだけど!?帰んないと佐野さんも困るよな、まじごめん。」


ぱっと後ろを振り向いて確認して見た時計の針は6時をもうとっくに過ぎていた。こんなに夢中に話せる相手がいるなんて。


「俺、チャリ通だから自転車で帰るんで!また明日な?先輩方お疲れ様でした!!!」


颯爽と角を曲がっていった加瀬くんの後ろ姿は凛々しくて見ていて清々しい気分になった。