「さて、問題は、あれはどんな鬼かって事だが」
「そんなに問題が?」
鬼ってどれも一緒じゃないのか。
「相手によってはお礼参りされるぞ」
「わお」
火宮家に討ち入りに来る鬼たち。
火炎の術師の集まり。
大火事不可避。
「それはとても困ります」
「だろ?」
「イカネさん、あの子はどんな鬼かわかりますか?」
「わたくしの見立てですと、酒呑童子かと」
「酒呑童子って………」
天を仰ぎ、乾いた笑いをこぼす先輩。
「なに、そんなにすごいの?」
私の疑問に、イカネさんは、美少年ふたりから視線を外さずに答える。
「酒呑童子といえば、最強と言われている鬼です」
「でもまだ子どもに見えるのに」
「ええ。妖気からするに、まだ子どもでしょうね。おそらく、大昔に封印された酒呑童子の頭の息子でしょう」
てことは、若様だ。
先輩はふらりと立ち上がる。
「…………ヨモギ、そいつ、元いた場所に返しに行くぞ」
「鬼か!」
いきなりなんてこと言い出すんだこの男は。
「鬼はあいつだ」
「せっかく仲良くなったふたりを引き離すなんて、先輩の方がよっぽど鬼です!」
「ほぅ? 俺に口答えすんのか」
「くぅっ………、でもここは、ひきませんよ」
腰が引けながらも拳を構える私の後ろから、ヨモギ君と鬼の子の捨て犬の眼差しが援護する。
「………しゃーね。討ち入りが来たら止めろよ」
先輩は折れた。
両手を繋いで飛び回る美少年ふたりを見ていると、子どもは仲良くなるの早いなぁと思う。
その一端を担った焼きマシュマロ最強。
「もしもの時は、お前には人一倍働いてもらうからな」
「………お手柔らかに」
今日、自身の無力さを知ったばかり。
全てを救えるとは思えないが、夢や希望も捨てたくない。
私の手の届く範囲で頑張りますよ。
「オレ、ヨモギ。おまえはなんてなまえだ?」
自己紹介なんて始めちゃってまぁ、微笑ましい。
「ボク………」
「なんだ、おまえもなまえないのか?」
「うん………」
「じゃあ、オレがなまえかんがえてやるよ」
「え?」
「オレのなまえ、ご主人様がつけてくれたんだ。だから、こんどはオレがかんがえる」
「うんっ!」
「そうだな………。マシュマロがすきだから………マシロ。マシロはどうだ?」
「マシロ、いいよ!」
「マシロ、マシロ!」
「ヨモギ、よろしく!」
「よろしくマシロ!」
マシュマロが理由でいいのか。
いや、可愛いよ、マシロ君。


