「桃木野も引っ込め。我らが家だ。お前達は黙って我らの役に立てばよい」
「当主とは、先頭に立ち、部下を守り、一般人を守るのが仕事だろう」
「今まで誰が、無力なお前達を守ってきたと思ってる! 今度はお前達が我を守る番だ!」
「……それは、世代交代ととってよいか?」
「何?」
「当主は、引退する、ということでよろしいかと聞いている」
無力な人たちを守らないというのなら職務放棄とみなす、と常磐は言っている。
「くそっ……」
最後の一人。
火宮当主が進み出る。
「我の出番のようだな。いいか貴様ら。我々は部下達の脱出経路を確保する為にだな…」
「御託はいい。もう十分だ」
先輩は聞くつもりがない。
逃げることを正当化する当主達。
戦うことを美徳とする次期当主達。
どうせ会話は平行線だ。
「流れ的には陽橘が答えるべきなんだろうが、ここには居ないしな。俺で我慢してくれ」
「何を言って…!」
「要は、被害者がいなくなればいいんだろ? ……ツクヨミ」
「お任せあれ」
ツクヨミノミコトは先輩を盾に顔だけだして、右手を額に当て敬礼する。
「何をする気だ!」
「お? なんだ、やるのか? テメェらみてえな腰抜けには勝つ自信しかないね」
刀に手をかける先輩の、悪い笑みを見た腰抜け当主は怯えて尻餅ついた。
実力不足を理由に、先輩を処分しようとする人がこれなのだ。
笑ってしまうね。
で、先輩はツクヨミノミコトに何をさせるつもりだろうか。
『あははっ、私は気づいているよ。大船に乗ったつもりで、私に任せるがいい』
『よろしくお願いします』
諸々はツクヨミノミコトに任せよう。
だが、屋敷の破壊行為を忘れたわけじゃない。
『くれぐれも、大惨事にはしないようにお願いしますね』
『もちろん! 何かあっても先輩のせいだよ!』
『責任転嫁!』
『私は先輩の命令に従っただけ。つまり、何があっても先輩のせいだからね。月海は心配しないで』
何をする気なんだろう。
……とても不安だ。