「お前達!」
当面の危機が去ると、当主達が揃って進み出てきた。
「老害め……」
「先輩……」
背中をつついて小声で諌める。
ノールックで顔面に肘鉄をくらった。
ひどい。
「神水流の次期当主よ、この責任はどうとられるおつもりか」
「此度の神水流の行為で、何人死んだと思ってる」
「我が家の被害は甚大にして」
「全ては神水流が仕組んだことだ」
各家当主が口々に言うが。
火宮当主、貴様は違うだろう。
本人がいないからって、しれっと全ての罪を押し付けようとするんじゃない。
「じじいどもが。脅威が消えて集団になったら活気づきやがって………」
響が聞き取れないほどの声量で毒を吐く。
しかし表情は変わらない。
本人達を目の前にして、すごい胆力だ。
「偉そうにすんなよ、真っ先に逃げようとしたくせに」
「雷地、黙りなさい」
本人達を目の前にして、すごい胆力だ。
「不祥事はよくないでしょ。純粋に可愛いを褒めてもらえなくなっちゃう」
「柚珠!」
「自身の正義に一度でも傷をつけると、戻ってこれなくなる」
「常磐、お前もか」
本人達を目の前にして、以下略。
彼らは、響を守るように周りを固める。
胆力とは、次期当主には必須の能力らしい。
「お前も、そちら側につくというのか」
「勿論」
火宮当主の睨みを受けても、先輩は微笑み返す。
「あそこは一丸となって、巨人を討ち倒す場面だったはずだが」
先輩も、結界を破り逃走を図った当主達の行動を責める。
もちろん私も先輩の味方なので。
先輩の半歩後ろに控えるように立つ。
これは先輩を立てているのであり、決して盾にしようとしているわけではないと言い訳しておく。
先に反論してきたのは金光院当主だ。
「我々は当主だぞ。倒すのは貴様らの役目」
返しは勿論、次期当主の雷地。
「何のための次期当主だ。親父が死んだら、俺が跡を継いでやる。経験豊富な年上が、先陣切って戦えよ」
それから彼は、思い出したように眉尻を下げた。
「……あ、ごめんね。返り討ちにあって、尻尾巻いて逃げたんだったねぇ」
「あれはわざとだ! お前達に経験を積ませる為にだな…」
「見苦しいなぁ。親父は俺達より弱かったって認めろよ」
「雷地……!」
「黙っておれ、金光院。……いくら次期当主といえど、今は子供。当主は任せられん。つまり万が一、我らが死んでは家が無くなってしまう。それでは残されたものが困るのだ」
「残された子分達はボクが率いてあげるから安心してよ。ダメならその程度の家だったってことでしょ。腰抜けの家なんて潰れちゃえ」
「この、親不孝者め……!」