青先輩もアイスも餅ちゃんも、どの意見にも一理ある。
一理あるから困るわけで、ならば自分で決めることが大事だよね。
後悔したくない。
こんな喧嘩別れみたいな終わり方はいやだもん。
宿題を放り投げて、髪の毛を乾かしに洗面所にいくと、リビングでお母さんとお父さんが晩酌をかわしてゲラゲラ笑っていた。
私の両親は、高校時代に同じクラスになったことがきっかけで仲良くなり、高校2年生から付き合い始めた。
それから一度も別れることなく、同じ大学を受験して合格し(お父さんだけ一年浪人したらしいけど)、ラブラブなキャンパスライフを送ったそうな。
お父さんが就職して2年後に結婚、そして私が4年後に産まれた。
お父さんのお弁当作りが面倒だ、とお母さんは今朝言ったけど、今手に持っているグラスは結婚記念日に買ったペアのワイングラスだ。
むかし、『よく飽きないね』と言った私にお母さんは、『飽きてるわよぉ。ただ、それでもいいのよ。お父さんとは友情の絆も強いから。友達夫婦ってやつね』と言った。
そして、『もう二人で一人分の人生だから、一緒にいないと幸せじゃないの』とシワをつくってえへへと笑った。
私の理想は両親だ。
お母さんはお父さんに出会って友達になり、恋をして彼女になって、結婚して妻になって、私を産んでお母さんになった。
それは、友人関係から恋人関係になり、家族関係へと変化したということ。
私は青先輩の彼女でいたいけど、ゆくゆくは結婚して奥さんにもなりたいし、子供も2人くらい育てるお母さんになりたい。
この恋の種がそうやって変化する種であってほしいと思っている。
でも、青先輩の理屈は違った。
『サッカーしたいなら友達、デートしたいなら恋人、進路相談なら先生、それぞれ役割があって、性欲処理だけならセフレってこと。とにかく役割が違うんだ。俺の場合は明確に違う』
役割を明確に分けていた。
人は一つの役割の中だけに収まるわけでもないし、何役だってこなせるものだよ。
恋人も何役とこなせる存在なんじゃないのかな。
だからこそ、誰よりも特別な人になるんだ。
きっとね。
私には私の恋愛観があるみたい。
青先輩ありがとう。
自分がどんな恋愛をしたいのか掴めた気がする。
あなたと付き合わなかったら、気がつかなかったことだよ。

