「くるみちゃんたち何点だった?」
岩井さんが後ろを向いてきいた。
私たちが点数を言うと、彼女は自分の解答用紙を伏せて赤星くんを不思議そうな表情で見た。
「喧嘩しまくりの不良だって噂があるけど……、嘘なの?」
「いいや?今朝もしてきたとこ」
「ふうん……」
口を曲げてうつむいてしまった岩井さんに、私は赤星くんを軽く睨んでから言った。
「嘘だよ、嘘。赤星くんが不良なのは見た目だけなの。今のもほんの冗談だよ」
「冗談なの?」
「ホント」
赤星くんは袖をまくって鍛え上げられた腕を出した。
そこにぷっくり膨れた10cmほどの赤線が2本入っている。
その周りにも、かさぶたが治りかけている傷など、新旧様々な生傷がついていた。
岩井さんは「げぇ……エグッ」と眉をひそめて前を向いてしまった。
刃傷沙汰だと思ったのかな。
赤星くんが面白そうに岩井さんの椅子の座板を足先でガンっと蹴ると、「やめて!」と椅子を前にひいてしまった。
「……友達に猫飼ってる子がいるんだけど、そういう感じで傷だらけなんだよね」
私が冷めた口調で言うと、赤星くんは「この町の猫は制覇したね」と、ちょっと得意そうにスマホの画像フォルダを見せてきた。
写真にはたくさんの猫が保存されている。
車の下に隠れていたり、高い所で寝ていたり、不思議そうな顔でカメラを覗いている子猫たち。
「通学路ですげー見かけんだ」
「毎朝ギリギリ登校なのは猫を撮ってたからなの?家が遠いせいかと思ってたよ」
『赤星って他校の悪い先輩とつるんでるらしいぜ』
『中学生をボコって学校に警察来たって。退学処分寸前だったとか』
そんな根も葉も無い噂を流した張本人に、それは事実無根だと断固否定したい。
だいたい、他校の不良とつるむ、というのは赤星くんらしくない。
他校の不良と喧嘩している、の方が彼らしい。
もともと無責任な噂話だもん、今度そんな噂を聞いたら武勇伝っぽく脚色して噂返しをしてもいいかもしれない。
「本物の刀傷もあんぜ」
見たい、と言う前に赤星くんはシャツをめくってベルトを下げ、おへそを出した。
おへそと鼠径部の間に、確かに肌色の蛍光ペンで線をひいたような傷あとがあった。
「盲腸だよね。もう」
「ッチ。ばれたか」
可愛い一面を隠して、どうして悪ぶちゃうのか。
男子ってわからない。
っていうかね、パンツ見えてるよ……。

