私のお兄ちゃん season1

翌朝、玲蘭が家を出ようとすると、母がお弁当を渡してきた。


「お母さん。これ...!お弁当?」


「もう、コンビニでおにぎりは辞めましょう。
お弁当お母さん作るから。

玲蘭。これからは、すこし、肩の力抜いてちょうだいね。」


玲蘭はびっくりした。


「ごめんね。昨日、伊織くんとベランダで話してたの、聞いちゃった。


お母さんね、本当は2人とも連れて行きたかったから、玲蘭があのとき、離れたくないって言ってくれて、嬉しかったの。


経済的にも不安はあったし、行事も重なることもあって、寂しいときもあったかもしれない。
母親として、何もできていなかったけどね。

玲蘭を引き取って良かったって思ってるのよ。」



玲蘭の目は潤んだ。



「それより、中山さくらちゃんたちに嫌なことされてるの?もし、辛いなら先生に言うから、お母さんに言ってね。」



「されてないよ。大丈夫。」



「制服、昨日洗ってあったから。」



「あれは急な雨に打たれたからよ。大丈夫。」



玲蘭はお母さんのお弁当を受け取って立ち上がった。



「お母さんこそ、毎日お弁当なんて無理しないでよね。普通にこれからも働いていくんだからさ。


でも、ありがとう。」




玲蘭は少し晴れた気分で、学校へ向かった。



もう、誰かの顔色や評価を気にして行動するのはやめようと思った。




伊織が少し前を歩いていた。



「伊織、ありがとう。伊織のおかげで、お母さんやみんなに対して気を遣うの、やめようと思った。


これからは私のために、自分を動かしていくよ。」




「おう。」




「伊織ももらった?お弁当。食べるの、楽しみだね!」



玲蘭はそう言うと小走りで走っていった。
そして、奈々と合流して、笑顔を見せる。




玲蘭の少し後ろから、伊織は彼女の姿を優しい目線で見ていた。