翌朝、玲蘭が登校していると、後ろから奈々が来た。


「おはよ!玲蘭。」


「おはよう。奈々。」


「今日、全校集会ね。」


「うん。何度やっても、朝から緊張するよね。」


「嘘だぁ、生徒会長の風格漂わせてる人間がよく言うよね。」



校内に入ると、いつもとは違う目線が、玲蘭に向けられていた。



追い越していく生徒や、並行して歩いている生徒もチラチラ2人を見る。



玲蘭は、いつもとは違った感じに首を傾げる。



「な、なんか見られてない?私たち。」



奈々が視線に気がつき、キョロキョロする。



「奈々、玲蘭!」


似奈が息を切らして前から走ってきた。



「大変なの!昨日、うちのクラスのグループチャットにこんなものが流れてきて......。」



似奈の画面には、こんな文面が出ていた。





「春央中学生徒会長、雨宮玲蘭は彼女もちのクラスメイトの朝比奈伊織を誘惑中。

昨日も夕方の生徒会室で堂々とキス!

優等生も何をするかわかりませんね...って何コレ。」


「玲蘭、昨日たしかに、生徒会室に朝比奈くん来てたよね。本当なの?これは。」



玲蘭は奈々と似奈を交互に見て、口籠る。
奈々と似奈は優しい顔で言った。


「玲蘭。私たち、玲蘭が心配だから聞いたんだよ。怒ったりしないよ。」


「そうだよ。」


「昨日、確かにキスはした。でも、誘惑だなんて。私、そんなつもりなくて。昨日も、朝比奈くんに急にされて、私も混乱してるの。

嬉しい気持ちもあるけど、いいのかな、って気持ちもあって。」


「朝比奈くんからキス、されたんだね。
たしかに私、この文見た時、びっくりしたけど、玲蘭がそんなことするかな、って思ったの。」


「そうだよ。似奈、こんな噂話持ってきて、朝から何してるの、って思ったよ。私は。」


「だって1組のグループで急に友達が引用で流してきたんだもん。びっくりしちゃって。
みんなは有る事無い事言って盛り上がるし。

でも、朝比奈くんは、玲蘭のことが好きなのかもしれないな、とは思ったことあるから。私。あながち、キスはしたんじゃないかな、と思ってさ。」



「似奈〜。」



奈々は怒ったようにいうが、似奈は慌てて話を続ける。



「いやいや、去年、同じクラスでね。男子が玲蘭の体操服姿見て変なこと言ってたら、その子達のこと、ボッコボコにしてたから。」


「そんなことあったの?」


「うん。他の子は単に朝比奈くんが機嫌悪くて暴れただけだと思ったみたいだけど、私たまたま前後のやりとり見てたから...。」


「たしかにね、私もそう思ったことある。玲蘭がいつも、朝比奈にさようならって挨拶すると、あいつ、口角あげるもんね。特別な感情があるような気がしてた。

で、告られたの?」



「うん。好きだとは言われたんだけど。」



「じゃあ、堂々としていなよ。玲蘭悪くないじゃん。」



「いやでもね、私、朝比奈くんとは、そういう仲になってはいけないの。」



「気になってるのは逢沢さんのこと?」


「それもあるけど、違くて...。」




すると、予鈴のチャイムが鳴ったので、3人は急いで教室へ向かわなくてはならなくなった。