2限は山飼先生の理科だった。
玲蘭は教科書を用意して、新しい席に座った。


「雨宮さん!」


楓が話しかけてくる。
玲蘭は誰にでも向ける営業スマイルを楓に向けた。


「はい。」

「隣の席だね。よろしく!」

「よろしく。」



玲蘭はよろしくしたいわけではなかったが、とりあえず笑顔で返した。


チャイムと同時に山飼先生が入ってきた。
山飼は厳しいので、学級委員も緊張して号令をかける。



「きりーつ、礼!着席ー!」


「お、5組は席替えしたのか。」



山飼が居るのに気づいた楓は、小声で言った。



「うわー、次、山飼の理科かよ。俺パス。おやすみー。」



玲蘭はそれを、聞いて慌てる。



「え、まずいよ、加賀美くん起きて。」



「そこで寝てるの誰だ!」



楓が顔を上げると、山飼はため息をついた。



「やっぱりおまえか。全く、このクラスにはクズが多くて授業する気にもならんな。」



「んだと!」



楓は急にキレて、机をドンッと拳で叩いた。
クラスがすこしざわついた。



「制服も正しく着れない。教師に対する態度も悪い。
勉強も授業を真面目に受けようとしないからできない。クズでしかない。」


山飼はそう言いながら、楓に近づいてくる。


「生徒をクズ呼ばわりする先公にクズなんて言われたくねーな。」


「おまえみたいな奴がいると空気が、教室の悪くなる。出て行け。」



玲蘭は山飼と楓のやりとりを近くで見ていることしかできなかった。



「まったく、バカの相手は疲れる。」


「おい、山飼。じゃーさ、俺のことはどう説明するわけ?」


一番うしろの席の伊織が立ち上がる。



「俺、中間も2番だったんだろ?大人しくて真面目なやつがイコールで頭がいいとは限んねーだろ。」



山飼はぐぬぬと歯を食いしばる。



「生徒を素行でしか判断してねーてめーのがクズ教師なんじゃないの?」



「朝比奈ぁ、てめえ!」



山飼が伊織に突っかかる。



「先生、そのへんにしといた方がいいですよ。
俺らみんな見てるんですから。」



洋一が言うと、山飼は舌打ちをして教卓に戻った。


「授業を受ける気がないやつは出て行け。それ以外のやつは教科書25ページを開け。」



山飼が言うと、伊織と楓は出て行った。



山飼は隣のクラスに迷惑だろうくらいの勢いで、黒板にバンバン音を立てながら、チョークで水溶液と書き始めた。