家に帰って、陽茉莉は真っ先に携帯電話の電源を入れた。
起動画面がやけに長く感じる。

試すのは、もう何度目になるだろう。

亮平の誕生日が暗証番号だとは限らない。けれど、どうしてかそれが暗証番号なのではないかという漠然とした想いが渦巻き、緊張を高めていく。

やがて暗証番号入力画面が立ち上がった。

陽茉莉はごくりと息をのむ。

つい先刻亮平から聞き出した誕生日をゆっくりと入力した。
最後に確定をタップする。

「っ!」

ぱっと画面が明るくなりロックが解除された。
待ち受け画面には電話とメッセージのアプリに複数の着信を示すお知らせマークが出ている。

望んでいた情報が見られるかもしれない。

ドクンドクンと緊張がはしる。
電話のアプリをそっとタップした。

ーーー
通話履歴 6月3日 不在2件 水瀬亮平
ーーー

「ああっ……」

ひときわ心臓がドクンと跳ねあがった。
6月3日、その日は陽茉莉が事故にあった日だ。

過去の履歴を遡ってみても、その大部分が亮平の名前で埋め尽くされている。

「……はぁっ、……はぁっ……」

息が乱れる。バクンバクンと心臓が暴れ出す。
こんなのどう考えても仕事での付き合いじゃない。
陽茉莉と亮平が親密であったことを示す有力な証ではないか。

次に陽茉莉は震える手でメッセージのアイコンをタップした。人の名前がずらりと表示される。結子や遥人の名前もある。その中で未読はいくつかあったけれど、抜きんでて多い未読メッセージにくぎ付けになった。

ーーー
水瀬亮平 未読30件
ーーー

ここにも亮平の痕跡がある。

心臓がバクンバクンうるさい。
ここに、何が書かれているのだろう。
緊張が、高まっていく……。