着替えなど何も持ってこなかった陽茉莉は着ていた服を全部洗濯乾燥機に放り込み、亮平の大きめのトレーナーを借りた。袖は長いがお尻はすっぽりと隠れる。当然下着は付けていない。

「……陽茉莉、さすがにそれは目に毒」

「だって、何も持ってこなかったんだもん」

「わかってるけど、何か罰ゲームを受けてるみたいだ」

「私が?」

「いや、俺が」

さっき一緒にお風呂に入ったときだって綺麗な体だなどと不埒な目で見てしまったのに、ギリギリ隠れるトレーナーは亮平を煽っているとしか思えない。この状態で一緒のベッドで寝るというのだから、どんな拷問だろう。

陽茉莉は母とケンカして家を飛び出してきた。普段の陽茉莉からは考えられない行動。それ故に彼女の心が荒れているのではないかと心配しているため、そんな状態の陽茉莉にムラムラするなんて言語道断だと思うのに。

「はぁ……」

ため息は自分の情けなさに呆れたためだったのだが。

ぎゅうっっっ

ベッドへ入った陽茉莉は亮平の腕に絡みつく。腕から伝わる陽茉莉の柔らかな感触に、ドキリと胸が揺れた。

「亮平さん」

耳元で小さく囁かれる甘い声。陽茉莉の方へ顔を向ければ、薄暗闇の中長い睫毛が揺れる。

「ぎゅってして」

甘えた声でくっついてくる陽茉莉の腰を引き寄せれば、陽茉莉は亮平の体にぴっとりと身を寄せた。髪を梳くと嬉しそうに目元を綻ばせる。愛おしすぎて本能的に唇を重ねた。

ちゅっというリップ音が脳内を刺激して、それ以上を求めたくなる。

触ってくれと言わんばかりに短いトレーナー。裾から手を滑り込ませれば、柔肌がとても気持ちいい。

「こんなときにしたいなんて言ったら怒る?」

「怒るわけないよ。亮平さんの手、気持ちいいの。いっぱい触ってほしい」

「この煽り上手め」

「亮平さんにだけだから。いいでしょ?」

「いいに決まってる」

甘く触れ合う声が次第に吐息に変化する。
それはとても甘ったるくて魅惑的で官能的で。
鼓膜の奥を震わせ、理性なんてあっという間にどこかへ行ってしまう。

このまま朝が来なければいいのに……そう思ったのは一瞬で、二人は時間とはかけ離れた場所で甘くやわらかな空気に溶け込んでいった。