一人目は、亮平が車椅子になる前から付き合っていた彼女で、車椅子になった後も献身的にサポートしてくれていた。けれど車椅子になる前に当たり前にできていたことや行けた場所に行けなくなり、だんだんと不満が募っていって別れを切り出された。

亮平に止める術はなかった。

二人目は車椅子になってから出会った彼女で、社内恋愛だった。いろいろなことによく気が利くいい子だった。だけどそれは仕事に関することだけで、プライベートではまったく何もしない。彼女にとって亮平は自分のステータスを上げる存在だった。

その頃の亮平は部長で、エリートコースまっただ中のうえ次期社長と言われていた。彼女にとって亮平という彼氏は肩書きの一部だったのだ。

嫌気がさしたのは亮平の方だ。だが別れを切り出す前にそれを察知した彼女の方から別れを切り出された。それが先の言葉なのである。

冷たい言葉が頭から離れなくて来る日も来る日も亮平を悩ませた。
払拭できる気はしなかったけれど、がむしゃらに仕事をすることで頭の隅に追いやっていった気持ち。

それが今になって……陽茉莉と接することで思い出してしまうなんて、どうかしている。

「亮平さん、どうしました? はっ、もしかして私食べすぎちゃいましたか? いちごが少なくて怒ってる?」

「えっ?」

サーッと青ざめる陽茉莉を見て、自分の手元のクレープを確認する。真ん中に乗っていた一番大きないちごがなくなって、クレープにくっきり歯型がついていた。

「私のっ、私のバナナ食べていいですからっ」

ずずいと目の前に差し出される陽茉莉のバナナチョコクレープ。たっぷりのクリームとチョコがトッピングされ甘ったるい香りを放つ。

「……別にそんなことで怒らないけど……じゃあ、まあ、……いただきます」

パクリとかぶりつけば、クリームとチョコ、そして輪切りにされたバナナがするりと口の中に入ってきた。

「どうですか? どうですか?」

「ん、甘くて……美味い」

「やっぱり甘いものは正義ですよね~」

ふふっと嬉しそうに笑う陽茉莉は自分のクレープにかぶりつく。「ん~美味しい~」とこれまた幸せそうに笑った。

亮平は胸がいっぱいになった。