君がくれた無垢な愛を僕は今日も抱きしめる


「はぁ……」

一人飲み物を買いに来た自動販売機の前で、陽茉莉はため息をついた。
何を買おうかとラインナップを見つめるが、そういえば亮平の飲み物の好みすら知らない。

とりあえず無難にお茶にしようと手を伸ばした。
自分の目線よりも上のボタンを押し、がっこんと落ちてきたお茶をかがんで取り出す。陽茉莉にとっては簡単な動きだけれど。

(これって亮平さんに取ったら難しいのかな……?)

やることなすことすべてを亮平と重ねてしまい、陽茉莉の頭の中は亮平でいっぱいだ。

「ああ、もう、しっかりしろ、私!」

ぶんっと頭を振るとゴチっとおでこを自販機にぶつけた。

「いたっ!」

ガッコン

陽茉莉の悲鳴と同時にお茶がもう一本落ちてくる。

「えっ、こ、壊しちゃった?」

自分がおでこをぶつけた衝撃でお茶が落ちてしまったのだろうかと焦るが、目の前でランプがピカピカと点灯している。

「こ、これはっ!」

顔を輝かせた陽茉莉は走って亮平の元へ戻った。

車椅子専用の休憩スペースはバリアフリーになっていて、一部畳スペースになっていたり簡易ベッドが置いてあったりして自由に休憩できる。その畳スペースで、亮平は車椅子から降りてごろりと横になっていた。

(あれ? 寝てる?)

陽茉莉が近づいてうかがい見ればやはり目を閉じている。

(……綺麗な顔。髪の毛もサラサラだなぁ。触ってもいいかなぁ……)

少しだけ、ほんの少しだけでいいから亮平に触れたい。
そうっと手を伸ばす。
と――。