今どきの企業経済のあり方が、働き方改革だの、SDG'sだの、目新しい言葉で見直されて久しいが、当社もご多聞に漏れずリモートワークを推奨する傾向にあった。「あった」という過去形を使ったのは、ここのところリモートワークよりも出勤を推奨するようになっていたからだ。
 1ヶ月前までは俺もリモートワークだった。営業訪問をリモート会議に切り替え、PCの画面を通して相手の顔を見、PCの画面上で資料を共有した。俺はそんなことはしなかったが、遊びに行った先の背景をアプリでVR室内にしたり、画面に映る上半身だけスーツ姿で下半身はジャージ、という人も居た。
 女性の中には、朝早く重いバッグを抱えて出社するのが辛いという人も居た。男の俺にはわからないし、通勤にそんなに時間がかかるほうではないので、混んでるなぁくらいしか思わないが、マナーの悪い乗客からのストレスが多くて憂鬱になるそうだ。
 9時始業がなかなか分散せず、満員電車が解消しないまま何十年も経っている。働き方改革がうるさく叫ばれてるのに何故かここんとこだけは改善されない。謎だ。
 年配の、そろそろ定年退職を迎える上司たちは、若い頃は5時起きで9時出社、退勤後は連日の飲み会で帰宅は決まって午前様、という時代を経、リモートの気楽さを知った今となってはもう過去には戻れないと言っている。
 なのに、だ。「目標出勤率を増やす」と打ち出した途端、折角取り入れた時差出勤を打ち切った。方針転換甚だしく時差出勤を打ち切ることはないだろうに。何故急ぐのか。この国は満員電車に乗って定時に出勤するのが美徳なんだろな。
 リモートワークで問題無く対応出来てたコールセンター部門も、リアル出勤に切り替えられた。謎だ。
 俺が所属する部署は業績が上がって新入社員を増やし、フリーアドレスにしている。その割に席数が少ない。全員が出社すると座れない。座れない連中は会議室やミーティングテーブルで仕事している。そこで同じビル内にもう1フロア借りたいと申告したら、親会社の社長が「今どきじゃない」と却下してきた。と思ったら推奨出勤率なんてものがアナウンスされ、更に席取りゲームが激化。意味不明。出勤美徳思想なのは誰だ?
 顔を見て仕事しないと心のこもった営業が出来ない、って考えが俺の中にもあるのでなんとなく理解は出来る。けども、今どきか、それ?という気持ちもある。が、本社の社長が増床を却下したならリモートワークを推奨してると受け取れる。
 推奨出勤率を増やした理由は、若手、特に新入社員の教育、先輩のやってることを見て覚える必要があるからだと。リモートの間それが不足してた、確かに。「推奨」なので強引さは無い。教育期間だけ出勤するならわかる。全社に向けて出勤率を上げることに繋げる必要あるとは思えない。