「床になれないんですね、ベッドに腰掛けてたら少しは楽かも。お好きにどうぞ」
撫子は軽くそう言うと、料理に集中している。
言われたイオンは諦めたようにそのベッドに腰掛けた。
母国でも、欧州でもそれなりに女性のベッドで過ごすことはあったが、彼女にそういう意図は全くなく、椅子代わりに使えという。
初めて会った身元もわからない男に日本人の女性はこういうことをするのが普通なのだろうか。
それとも自分のルックス目当てで気を許しているのかイオンにはわからない。
だが今は宿も無ければニンニクも摂取していない。
吸血は明日にするのだと欲求に耐える。
こんなに自分の事を親身になっている少女を傷つけることなどイオンには考えたくも無かった。



