「仕方がありません、家に来て下さい」
イオンが撫子の言葉に目を丸くして、そして彼女を落ち着かせるようにその手を離す。
彼女からは女性が自分を誘うときに出る独特の香りが一切しない。
完全な善意で誘っているのかと思うと、こんなにも日本人女性は無防備なのかと呆れてしまうとともに大人として注意すべきだと思った。
「お嬢さん、軽々しくそういう事を男に言ってはいけない」
だが撫子はきょとんとしたあと、眉をひそめる。
「私の名前は川根撫子です。貴方は?」
「・・・・・・イオン・ワイズミュラー」
「ではイオンさん、名前もお互い知りましたし問題ないですね。
私は倒れそうで日本もわかっていない人を放置できるほど勇気ある人間では無いんです。行きますよ!」
まくし立てて強引に腕を引っ張る撫子にイオンは圧倒されながら荷物を持って立ち上がる。
誰だ、日本人女性は物静かだとか押しに弱いと言っていた連中は。
いや、これはむしろ武士道というやつだろうかと、イオンは空腹の回らない頭でぼんやり考えていた。



