「イオン様!これは一体」
「まずは撫子の怪我の処置だ」
「私も参ります」
「お前は来なくて良い」
イオンはアミルに一瞥するとその場を後にした。
部屋に戻り離宮にいた医師を無理矢理呼んで処置をさせた。
本来ここにいる医師は国王のため。
それを無視し首根っこを掴んで攫ってきたのだ。
「神経を切られたりはしていませんが、傷跡が残るやもしれません」
撫子の右腕の横から前にかけて十センチ以上切りつけられ、そこから血が流れていた。
傷跡が残るという医師の言葉に、イオンは奥歯を噛みしめる。
何故目を離してしまったのか。
離宮といえどここの中なら安全と思ってしまっていた。
「イオン、大丈夫だから」
椅子に座っている撫子が立ったままのイオンに声をかけると、イオンは撫子の前に跪いた。
「すまない。私のミスがこんな事を招くなど。
痛むだろう、撫子に傷をつけてしまった。詫びて済むものでも無いのに」
手を触れるともしないイオンに、撫子から手を伸ばしその大きな手を取る。
撫子が腕を動かしたときに痛みで顔をしかめたのをイオンは見逃さなかった。



