視界に飛び込んできたのは、ナイフを振りかざす男。
その足下には腕を押さえ壁に追い詰められている撫子。
白かった長袖のブラウスが赤く染まり、撫子の手も血がついていた。
撫子はイオンを見て、そして次の瞬間には腕の中にいた。
理解できない状況に自分を強く抱きしめる男を見上げる。
いつも自分に優しく微笑んでいた麗しいイオンが、恐ろしいほどの目で先ほどまで自分を切りつけてきた男を睨み付けていた。
「イオン」
「すまない。本当にすまない」
撫子を見ることも無くイオンがそう呟くと、逃げ出そうとした男を撫子を抱えたまま長い足で勢いよく蹴り倒し、そして腹を思い切り踏みつける。
男は目を見開いて潰れたような声を出しながら泡を吹いて意識を失った。
撫子を抱えながら小屋を出るとアミルが焦ったように走って来る。



