麗しきヴァンパイアは大和撫子に救われる



「と、いう流れになります。離宮での謁見も国王のご配慮かと」


アミルから謁見の流れを説明され思案していたその時、嗅ぎ慣れた甘い香りが薄く鼻に届き思わず椅子から立ち上がる。


「イオン様?」


撫子の血の香りだと認識した瞬間には部屋を飛び出していた。

香は薄く、必死に廊下を走りながら撫子がいた部屋に行けばドレスだけが散乱していた。
頭が真っ白になる。
撫子がいない。
血の香りがする。

何か、何か小さく頭の中で剥がれたような気がした。

だがそんなことより撫子を探し出さねば。
すぐに走り出し、必死に匂いの元を探して離宮の外の古びた小屋の前で濃い血の臭いが漂ってきたことで頭に血が上り、その古びた木のドアを蹴破った。