自由の身なら色々な場所を案内したかったが、アミルを通し国王への謁見を奇跡的に取り付けたはいいが、最低限の場所でしか行動を許されなかった。
ワイズミュラー家に戻ることも許されず、すぐさま離宮の一室をホテル代わりにあてがわれた。
海外というのはカップルでいるなら基本ダブルベッドであってツインベッドではない。
そんなことからダブルベッドに撫子は顔を赤らめていたが、あくまで婚約者として来ている以上は不審に思われないようにと一緒のベッドになった。
好きだと思う相手と同じベッドで寝ることにただドキドキする撫子に対し、一番心から欲しい相手であるのに本能のまま思わず吸血しないようイオンは耐えていた為、睡眠不足になっていた。
ドアのノックする音に撫子を下がらせイオンが近づけばアミルの声がしてドアを開けた。
「お久しぶりでございます。やっとこちらに伺うことが許されまして。
ゆっくりお話ししたいのですが、まずは取り急ぎ謁見の打ち合わせをこれから別室で致したく」
「別室で?他に誰かいるのか?」
「いえ私のみです」
「では撫子も連れて行こう」
「申し訳ありませんがイオン様お一人で。
その間撫子様には謁見の際着て頂くドレスをご用意したので選んで頂きたいのです。
お気に召したものがあると良いのですが」
開いていたドアのところに立っていたアミルが後ろを向いて指示を出せば、メイド二人がドレスを何着も手に持ち運び込んできた。



