「条件を満たしていないというのに一人で戻り、国に入れてもらえるかどうか」
「私がついてく」
イオンが言い終わると同時に撫子が強い声で言った。
何を言っているのかとイオンが声を出そうとすると、
「ただ女性を連れて行けば良い訳じゃ無いのは知ってる。
でも他の人にはその女が記憶を蘇らせた女性かどうかはわかんないよね?
ならまずは私が記憶を蘇らせた女性として連れて行ってみれば、もしかしたら国には入れるかも。
後は王様ってイオンが信頼している人なんでしょ?もしかしたら弱ってることで許してくれる可能性に賭けてみたら?」
ね?と明るく言いつつもかなりの無茶を言っているのは承知だ。
だが時間が無くて良い相手がいないならと。
違う。
好きな人の国に連れて行って欲しい、それを叶えられるチャンスに撫子は思えてしまった。
そんな驚くような提案をされ、イオンは自ら気づきたくない想いに気づいたことに動揺していた。
反面、撫子を婚約者と偽って連れて行きその世界から出さなければ、いずれ撫子はヴァンパイアである自分を伴侶として受け入れてくれるのでは無いかと言う淡い期待を持ってしまう。



