麗しきヴァンパイアは大和撫子に救われる


ふと自分に影が出来、ほのかなニンニクの香りにピクリと指が動く。
ゆっくり顔を上げると、横から心配そうに肩くらいまでの黒髪の少女がイオンを見下ろしていた。


「大丈夫、いや、あーゆーおーけー?」


作り笑いしながら撫子は何とか知っている英単語を繋いで、目の前にいる二次元の王子かのような外国人に勇気を出して話しかけた。
バイトに向かう時この公園に一人でいるのを見かけたが、まさか数時間後もいるとは思わず迷子ではと心配になったのだ。


「君は、子供か?」


流ちょうな日本語に撫子は驚いたものの、子供か?と聞かれてカチンとくる。
確かに成人した大学二年生にしてはいつも高校生と見間違えられるけれど、外国だと余計に幼く見えると聞いたことはあるがやはり腹は立つ。


「私は大学二年生、20歳です!」

「それは失礼。日本人女性は幼く見えるというのは本当なのだな」


銀のような柔らかな長めの髪に吸い込まれるような濃紺の瞳、長いまつげ。
麗しい人と言うのをこえて、何か人外を思わせるほどの整った顔立ちに撫子は引き込まれるように見つめてしまった。


「すまないがこのあたりに食事できる場所は無いだろうか、出来ればニンニクの入った料理が良いのだが」


ニンニク?と撫子は不思議に思いつつ、よほど腹を空かせているようだと心配になっても時間が時間、既に夜の零時近くで近所の店もやっていない。
撫子がバイトしてきたイタリアンのお店も店じまいして、家に帰るところだった。