麗しきヴァンパイアは大和撫子に救われる


以前父親から聞いたことのある、自分と相性の良い女の血は別格なのだと。
撫子の血は別格だ。ただでさえ旅をし多くの女性から血を飲んだからこそそう思える。
だがそれは気のせいかも知れないと、必死に考えないようにしているというのに。


「ヴァンパイアは血の味でそれがわかる。そしてそれは貴重なんだ。
撫子、君は自分を大切にした方が良い。
若い娘のところに男がいればご両親も嘆かれるだろう」

「両親はもういません」


撫子の両肩に手を乗せ言い聞かせるようにすれば、撫子は真っ直ぐな目で言い切った。
両親がもういないという言葉にイオンはどう言えば良いのかと戸惑う。


「ですからイオンさんがよければ、ここで私の血を飲みつつ次を探せば良いのでは?」


真面目な顔で提案されイオンは一瞬あっけにとられたが、


「さっき言っただろう、自分を大切にしろと!
知り合ったばかりでヴァンパイアなどという外国人を引き留める方がどうかしている」

「私はイオンさんの力になりたい、ただそれだけです」